カシオ計算機(株) アナログ腕時計 デザインコンペ
〜強大ブランドへのデザイン対抗戦略〜

デザインの条件と達成目標

  1. カシオのアナログ時計のイメージアップに貢献する腕時計とする。
  2. 18才〜24才、都市型で、ファッション感覚鋭敏な女性をメインターゲットとする。
  3. ペアウォッチとしての男性用も3機種以上、ラインナップに入れる。
  4. シリーズ全体で、10機種以上の構成とする。
  5. 売り上げ目標を3億円以上とする。

考察の取り掛かりは、「プロダクトコンセプトを何とするか?」でした。
そこで、ターゲットの女性達が、
どういう時計に興味があるか?
どういう時計を欲しいと思っているか?
どういう時計を持っているか?
を調べることにしました。


左より
思い出のワイン色(ノスタルジーワイン)
雨上がりの紫陽花の色(スイートパープル)
蒼き深き湖の色(ポエティックブルー)


左より
窓辺のサフランの色 アンティークイエロー
昼下がりのカフェオレの色 ムーディーブラウン
霧がかかった木立の色 アコースティックグリーン

しかし、調査の結果は、私達の先行きの展望を、真っ向から打ち砕くものでした。

女性達は、特定的に、ロレックス、カルチェに興味があり欲しいとし、しかも、驚く程の数の人が現に所有しているという事実、そして、ロレックス、カルチェ以外には興味なしとしたことでした。

「世界の最高峰とする特定ブランドの時計を、指名買い購入しており、今後、カシオがどんな時計を生み出そうが、ターゲットの女性達の興味を引くことは、全く、ない!」ことを意味したからです。

さらに、「ファッション感覚鋭敏な女性」というくくりでも調査をする為に、原宿の「トップの女性ファッション・デザイナー」にインタビューを申し入れました。ロレックス流行は、彼女たち(高額所得の売れっ子デザイナー)が広めた流行でもあった訳です。

しかし、ここでも、私達の先行きの展望を、真っ向から打ち砕くものでした。
その返事は、時計をしていない腕を見せて、「今、時計はファッションではない。」

この言葉とその深層心理を詳細に分析し、ロレックス流行を生み出しながらも、結果的に自らそれに呪縛されて嫌気している、広い意味での「ロレックス・コンプレックスの中にある女性」という、解釈に至ることができました。

こうして、「高級(に見える)時計、は即、イメージアップ」という安直な策は、おろか、「時計」(ロレックス、カルチェのライバルとしての)という提示すら有効ではない、ことを前提として、私達の考察は進めなければならなかったのです。

激しい内部討議の結果、時計のあらゆる属性の中で「より下位の(時計との関連の薄い)属性」と「ファッション性」を、考えられる限りクロスさせて、「これは、色で選ぶファッション小物。時計ではない。」という「プロダクトコンセプト」を創り上げました。

これによれば、購買は複数所有を前提としうる。また、既にロレックス、カルチェを所有している女性にもチョイスされる。そして「ロレックス・コンプレックス」にある女性達にも、時計ではなく「ファッション小物だ」、と自己納得してもらえる。

色は、慎重の上にも慎重に詮議し、「大人の女性」の感性に答えられる、深く、シックで、上品な色を10色選定し、デザインは、「個性を自己主張しない・個性」(時計という匂いを消す目的)というデザインコンセプトとしました。

私達のこの提案は、数次の激論の審査を経て、最後に、優勝と決せられ、その市場化では、「爆発的・記録的な大ヒット」、との結果を得ることになりました。